最高裁の判例とは最高裁判所の下した判決のことです。
英米の法律体系は「裁判判例」を積み重ねて作られたコモンロー(=慣習法)を採用しているので、時代に即した判断を下す事が出来るらしいのですが、日本の法律体系はローマ法を継承した「法律条文」で規制する大陸法でして、明治に作られた古い法律がまだ沢山残っています。
このため、時代に合った判断が必要な事件では、最高裁の判例を使って間に合わせなければならないようです。
本来判例には法的拘束力はないですが、下級裁判所は上級裁判所の判例を参考にして判決しなければなりませんから、事実上、強い拘束力を発揮しています。
今回は、「過払い金返還請求」に関係の深い判例を幾つかをご紹介します。
1 「過払い金返還請求」をすることが出来る法的根拠は?
例えば「過払い金は返還せよ」と定めた法律条文はありません。
しかし・・・、昭和43年11月13日、最高裁判所大法廷において下された、
・・・・・・・・、債務者が利息制限法の制限以上の利息や損害金の支払を続けて、計算上元本が完済となってから支払われた金額は、債務がないのに返済として支払われたものだから、民法の「不当利得の返還」を請求することができる。
との判例があるので、今では一般的に、「過払い金」は「不当利得」として返還請求できることになっていますし、「過払い金返還請求」で訴訟になっても、ほぼ100%借りた側が業者側に勝てると言われていいます。
2 「過払金には5%の利息を付けて返還して貰える」法的根拠は?
民法 第704条に、
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。
とあります。これは、不当と知りながら受け取った利益には利息を付けて返せという法律です。
そして、「過払い金」がこの法律に当てはまるかどうかを判断したのが、平成19年2月13日最高裁判所第三小法廷の判例です。
制限利息を超える利息として返済したために出来た過払い金を不当利得として返済するとき、悪意の受益者が付けなければならない利息の利率は年5%が相当である。
…という判決が下り、その後一般的に、過払い金には5%の利息を付けて返済するとするようになったのです。
余談ですが私はこれを利用したズルイことを考え出しました。「過払いが発生してからもズルズル返済を続ければ5%の利息が貰える!!」…と。
それには「過払い金返還請求」をしばらくしないでおけば良いだけのこと。銀行預金よりずっと有利です・・・・・・・・・。
ところがよくよく調べましたら、
民法第705条
債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
…というのがあるそうでそんなズルイことは出来ないと解ってガッカリしました^^;
3 取引履歴の開示請求に応じるのが貸金業者の義務
過払い金返還請求が盛んに行われるようになったのに、貸金業者が「取引履歴」を債務者に開示しない、嘘の報告をする等の悪質事件が多数起きました。
そのため、平成16年7月19日に最高裁判所で「貸金業者の債務者に対する取引履歴開示義務の有無」を争う裁判が行われ、最高裁所は次の判決を下しました。
貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,特段の事情のない限り,信義則上これを開示すべき義務を負う。
この判決の理由は、以下のようなものです。
- 債務者は、債務内容を正確に知らないと、弁済計画を立てられない。
- 過払金があるのにその返還を請求できない。
- 過払金があるのに更に弁済を求められ、応ずることを余儀なくされる。
- 貸金業者が業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易である。
- 貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合は、業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務がある。
- 貸金業者の開示拒絶は、不法行為というべきである。
この判決以後、貸金業者が「取引履歴」を債務者に開示しない、嘘の報告をするなどの悪質な事件はなくなっていきました。
ちなみに、取引履歴開示請求の方法ですが、電話で依頼するだけで送ってくれる業者が多いので、取りあえず電話一本してみることをおすすめします。
業者と電話でやりとりしたくなければ、郵便でも良いのですが、私の経験では、電話はいつ送ってくれるかの約束が、その場で取れるので、計画が立てやすかったように記憶しています。